[ vol.03 ]
Outdoor Adventure

言葉のいらない一枚
~インドネシアでの冒険~

冒険・旅行写真家Melanie Többe

2026.09.09 記事追加

気づけば、この道を歩いていた

まさか自分が、アドベンチャートラベルフォトグラファーになるとは思ってもいませんでした。そんな計画はなく、気づかないうちに少しずつ今の道を歩いていたように思います。

きっかけは、オーストラリアへの留学です。当時、プロダクトデザインを学んでいた私は、何か新しいことにも挑戦してみたくなり、写真の授業をとりました。毎週出される課題はどれも新鮮で、気づけば今までにないほど夢中になっていたのです。

最初は単なる好奇心でしたが、それはすぐに情熱へと変わりました。写真を通して、何かを表現する楽しさや、新しい景色や出会いに胸が躍る喜びを知ったのです。

それからも写真への思いは強くなる一方でした。インターンシップや友人との撮影を重ねるうちに、Instagramを通じて新しい仕事や出会いにも恵まれるようになりました。

大きな転機になったのは、思いどおりにいかなかったひとつの出来事でした。

修士課程で学んでいた頃、ノルウェーのアウトドアブランドでインターンシップをする予定がありました。ところが、新型コロナウイルスの影響で受け入れは中止に。それでも、その会社は私の写真を見てくれていて、代わりに商品撮影の仕事を依頼してくれました。それが、アウトドア業界での最初の仕事になったのです。

その経験をきっかけに、
「どうして本当に好きなことに、もっと向き合わないのだろう」
と考えるようになりました。

もともとハイキングもキャンプも大好きでした。自然の中で過ごすことと、写真を撮ること。その二つがひとつにつながったとき、「これが私のやりたいことなんだ」と自然に思えたのです。

ポートフォリオをつくるため、自分で撮影を企画するようになり、撮れば撮るほど、この仕事は自分に合っていると確信するようになりました。

それから6年。今ではアウトドアブランドや観光局、旅行会社、雑誌など、さまざまな仕事に携わっています。でも、オーストラリアの小さな教室で初めて写真に夢中になった気持ちは、今も変わりません。

私にとって冒険は、いつも「やってみよう」と思うところから始まります。

カメラが開いてくれる扉

初めて「旅をちゃんと写し取れた」と感じた旅のことは、今でもよく覚えています。アウトドア雑誌から、カメラのレビューと体験記事の仕事をいただき、友人と一緒にバックパックを背負ってインドネシアへ向かいました。

インドネシアは、ずっと訪れてみたかった場所です。深いジャングル、火山、海。もちろん、その豊かな自然にも惹かれていました。でも、それ以上に心を引かれていたのは、そこで暮らす人々です。温かく親切な人が多いと聞いていて、その空気を自分でも感じてみたいと思っていました。

スクーターで島を巡り、山を歩き、できるだけ長く自然の中で過ごす。その土地の日常にも少しだけ触れながら旅をする。そんな時間を重ねていました。

旅の途中、小さな村でスクーターがパンクしてしまいました。困っていると、近くにいた男性が修理を手伝ってくれました。その間、奥さんは私たちを庭へ招き入れ、「ここで待っていて」と笑顔で迎えてくれました。

やがて子どもたちも集まってきます。言葉は通じなくても、不思議と心地よい時間。彼女が身につけていた鮮やかな服がとても印象的で、ポートレートを撮らせてもらえないかと身振りでお願いしました。

撮った写真をカメラの背面モニターで見せると、彼女は私の手をぎゅっと握り、本当にうれしそうに笑ってくれたのです。

こんな瞬間があるから、今も写真を撮り続けています。カメラを持っていなければ、あんな出会いはなかったかもしれません。写真は、人と人との間に小さな扉を開いてくれます。本来なら生まれることのなかった出会いや会話を生み出してくれるのです。

今もその思いを胸に、自然や人々、さまざまな文化を撮り続けています。

一枚の写真が、人と人との理解を生み出すことがあります。そして、違いはあっても、私たちは同じ世界を生きていることに気づかせてくれるのです。私はそのことを、インドネシアの小さな庭で目の当たりにしました。カメラを彼女のほうへ向け、撮った写真を見せた、あの瞬間です。

自然と写真。その二つがひとつになったことは、始まりにすぎません。
今の私が届けたいのは、外へ出て、世界とつながりたくなるような物語です。

道具ではなく、旅の相棒

冒険を続けていると、本当に心に残る瞬間ほど思いがけない形で訪れることに気づきます。
道に迷った先かもしれません。
火山の向こうから朝日が昇る瞬間かもしれません。
だからこそ私は、機材のことを気にするより、目の前の景色や出来事に集中していたいと思っています。

OM SYSTEMを使うようになってから、旅のスタイルは大きく変わりました。以前よりずっと身軽に旅ができるようになったからです。そして身軽だからこそ、目の前の景色や出来事に集中できます。

一日中歩いても負担にならず、必要なものを背負ったまま移動できるし、スクーターのパンクが思いがけない出会いにつながったときも、すぐに撮り始めることができました。

私は、カメラに自分を合わせるのではなく、自分の撮り方にカメラが寄り添ってくれることが大切だと思っています。

重すぎたり難しすぎたりすると、いつか持ち出さなくなってしまいます。そうなれば、そのときにしか出会えない景色や瞬間を逃してしまうかもしれません。私にとってカメラは単なる撮影機材ではなく、人と自然、その土地とのつながりを見つけるための旅の相棒です。

この世界は広すぎる

旅に出るたびに、まだ知らない世界がどれほどたくさん残っているかを実感します。一生かけても、この世界を見尽くすことはできない。私は本気でそう思っています。

ここ数年、私は中央アジアにすっかり魅了されてしまいました。モンゴルやカザフスタンを旅し、どこまでも続く大地や、今なお野性を感じられる風景に心を奪われています。

特に惹かれるのは遊牧民の暮らしです。なかでも、訓練したイヌワシとともに狩りを行うイーグルハンターたちの姿に強く心を動かされました。人と動物、そして自然が深く結びついている暮らし。その世界は、これからも撮り続けていきたいテーマのひとつです。

自然とともに生きる文化に出会うたび、もっと知りたい、もっと伝えたいと思います。

自然はこれからも、私にとって最大のインスピレーションであり続けるでしょう。

世界を知れば知るほど、この地球がどれほど豊かで多様な場所なのかを実感します。そして、なぜ旅を続けるのかを考えるたび、思い浮かぶのはインドネシアのあの庭です。

見知らぬ女性と手を取り合い、一枚の写真を囲んで笑い合った、あの言葉のいらない時間。

人と人をつなぎ、自然と人をつなぐ物語は、この世界にまだたくさん残っています。その物語に出会うために、私はこれからもカメラを持って冒険を続けていきます。

写真: Melanie Többe
原文: Melanie Többe
編集: Michael Bonocore

Profile

Melanie Többe

ドイツ

メラニー・トェッベは、ドイツ出身のアドベンチャートラベルフォトグラファー。プロダクトデザインを学んだ経験を持ち、人と自然とのつながりをテーマに、世界各地の風景や文化、アウトドア体験を撮影している。軽量で防塵・防滴性能を備えたOM SYSTEMを携えながら旅を続け、写真を通じて自然への理解と共感を広げることを目指している。現在はアウトドアブランドや観光局、旅行会社などと協業し、人と自然を結ぶ物語を発信している。

使用カメラ

OM SYSTEM OM-5 Mark II