GLOBAL PRO GALLERY
野生動物の写真撮影では、体の姿勢と位置決めがとても大事です。餌動物を撮影する時はできるだけ自分が目立たず動物に脅威を与えないことが重要です。三脚を置くと撮影者の占める表面積が二倍に増え、とりたい姿勢をとることはほぼ不可能になってしまいます。信頼できる手ぶれ補正付きのカメラがあれば、たとえ三脚なしで現場へ入っても鮮明な写真を残すことができます。
ツンドラ、山、森、広大な平原、それらは誰かが求めるものでもなく、すべて野生種に属するものです。野生動物の撮影を行っていると、人を寄せ付けないような最も過酷な環境へも何度か足を運ぶことがありますが、そこには人間における支配などほとんど跡形もなく、土地はほぼ獣たちに支配されています。極限の気象条件、遠く離れた場所、そして困難な地形によって、これまで人間社会が発展するのを拒み、野生動物が君臨するこのような生息場所は保全されてきました。
これらの地域では車道がクマやコヨーテにとって食べ物や身の保全のために移動する通路となり、何体ものヘラジカやムースが妨げとなって人間が建てたものにもしばし近づくことができません。原野と文明が非常に明確に分断された私たちがいま住んでいる世界は、人類の長い歴史をみてもかなり新しい世界なのです。私にとって野生動物の写真を撮ることは、私たちの祖先がしてきたように世界を歩み進め、安全で便利なこの新しい世界では眠ってしまった本能や感覚を呼び覚ますための手段です。
秋に、オリンパスのOM-D E-M1 Mark IIIを平原に持っていく機会がありました。華氏マイナス25度にも達する北極圏のツンドラから、遠くにいるオオカミの遠吠えが木々の間をこだまする高山の草地まで移動しながら動物たちを撮影しました。次に向かう場所では何を目にすることができるのか非常に楽しみです。