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清水 哲朗
清水 哲朗日本
1975年横浜市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信の助手を3年間務め、23歳でフリーランスに。独自の視点でネイチャーからスナップ、ドキュメントまで幅広く撮影している。写真集 に『CHANGE』『New Type』『おたまじゃくしGenetic Memory』『轍』『トウキョウカラス』のほか、フォトエッセー『うまたび-モンゴル20年間取材した写真家の記録-』などがある。個展開催多数。主な受賞暦は第1回名取洋之助写真賞、2014日本写真協会賞新人賞、2016さがみはら写真新人奨励賞。公益社団法人日本写真家協会会員 日本大学芸術学部写真学科非常勤講師
世界一寒い首都モンゴル国のウランバートルに到着すると、会う人、会う人、誰もが「今年は暖冬だ」と言った。到着時の気温氷点下18度。厳冬の風景や暮らしぶりを撮るため最も寒い時期である1月中旬から3週間の滞在予定で訪れたのだが、この冬は氷点下30度を一度も下回っていないらしい。目的地はウランバートルから北西に1000km離れたフブスグル県北部。何度も訪問している地だが、以前、氷点下40度で撮影に夢中になりすぎて足の指10本が凍傷になった過去がある。それ以降、本格的な厳冬期取材は控えていたが、凍傷も癒え、防寒着から氷点下60度対応の長靴まで揃え、万全の体制で向かった。
全面結氷したフブスグル湖上を車で移動しながら御神渡りや氷の模様を撮影した。5年前よりも氷の迫力がなかったのは晩秋から初冬にかけて穏やかな天候だったことが窺える。しかし、暖冬とはいえ、遮るものがない湖上で風が吹けば流石に寒かった。
目的地へ着くと再会した友人が「今年は暖冬だ」と言った。温度計は氷点下34度を示していた。この地域では氷点下40〜50度にならないと寒いとは言わないらしい。
翌朝から2週間、北部の村を転々としながら、雪景色や霧氷、星空、遊牧生活、幼稚園、小・中・高校の様子など目につくもの全てを記録した。最も寒い日で氷点下39.6度まで下がったが、防塵防滴耐低温のOM-1 Mark IIもOM-3もカバーなしで2、3時間撮影しても液晶は固まらず、バッテリーが落ちることもなく正常に作動した。リチウムイオン充電池BLX-1(容量2280mAh)が強いのだろう。BLH-1(容量1720mAh)の時はいくつもの予備バッテリーをこまめにローテーションし、体で温めたりながら撮影をしていたが、その作業は不要だった。カメラの動作環境外の気温でも快適な撮影が行えたのは実に心強く、OM SYSTEM機材への安心と信頼度がますます上がった。